アスリートのキャリア形成や転職、引退後の人生設計に関する支援を行う「アスリートキャリアコーディネーター(ACC)」のBasicコースを受講しました。
アスリートの「セカンドキャリア」については、社会問題として取り上げられていますが、アスリートのキャリア形成を専門に支援するACCを育成する取り組みです。
今回はBasicコースで受講した内容についてご説明します。
アスリートキャリアコーディネーターとは(後編)
そもそもACCについて知りたい方は、前回のブログ「アスリートキャリアコーディネーターとは(前編)」をご参照ください。
今後はBasicコースの課題を提出し、Advancedコースも受講します。
アスリートに寄り添うことができるACCを目指します。
==目次==
1. 環境理解
① SCSC設立とACC育成に至った問題意識
・アスリート自身が競技以外のキャリア形成を考える機会が乏しい。
(引退後のキャリアを考えること自体がご法度の空気もある)
・半数以上の競技団体はキャリア支援を行っていない。
・アスリートの希望と組織以降のすり合わせの難しさ(=お互いの期待値のずれがある)。
② 背景
・1996年アトランタ五輪でメダル獲得数が減少。
・景気低迷の影響で、企業が実業団を維持できず、アスリートのキャリア問題が表面化してきたタイミングだった。
・その後、各競技団体による競争力強化の取り組みによりメダル数は増加したものの、キャリア問題は引き続き課題。
・20代後半以上の女性アスリートは60%以上がキャリアに対する不安を抱えている。
・社会全体で働き方やキャリアのとらえ方が変わってきた(転職、副業、コロナ、日本型雇用の刷新など)。就職先をあっせんして終わりではない。
2. ACC育成の目的
・アスリートがトレーニングを通じて獲得したスキルや経験はキャリア資本であり、社会で活用すべき貴重な資本。
・それを有効活用できればアスリートと社会の双方にメリット大。
・アスリートが強みやスキルの認識して言語化するためののサポート、および職業探索のサポートを行う専門人材がACC。
・キャリア形成支援は競技パフォーマンスの向上にも繋がる効果も期待できる。
*オーストラリアでは、キャリア形成支援を行うウェルビーイングコーチを代表チームに帯同させた結果、競技パフォーマンスが向上したとの報告あり。
3. キャリア理論
① デュアルキャリア
・アスリート引退後の「セカンドキャリア」ではなく、現役活動中から「デュアルキャリア」の形成をサポートする。
・「デュアルキャリア」は、「人」としての人生を歩みながら、「競技者」としての人生を”並行して”歩むという考え方。
SCSCホームページより(https://sportcareer.mext.go.jp/about-sportcareer/)
② プロティアンキャリア
・更に最新のキャリア理論である「プロティアン(=変幻自在)キャリア」の考え方を取り入れて、「転職」ありきではなく、「戦略」ありきのキャリア形成をサポートする。
・ポイントは3つ。
・キャリアは個人と組織のより良き関係を創る
・キャリアの成功とは、個人が「心理的成功」を味わうこと
・キャリアはいつからでも開発可能
SCSCホームページより(https://sportcareer.mext.go.jp/about-sportcareer/)
4. ACCのアプローチ
・ACCがアスリートに伴奏し、アスリートの目線でキャリア形成をサポート。
・PROG*などのツールも活用して自己理解を深め、アスリート本人が納得する進路に出会えるよう支援。
*Progresss Report On Generic Skills
・まずはCanを整理することで、アスリート自身が社会で求められる汎用的なスキルをすでに身に着けていることを理解すれば、「社会の役に立てる」というマインド醸成に繋がる。
1)Can ~アスリートができること、得意なこと
・アスリート自身が自分のスキルを認識し、言語化する。
プレッシャーとの向き合い方、献身性、判断力、コミュニケーション、目標設定、成功と失敗の処理・分析など →どのスキルもビジネスや今後のキャリアで活かせるもの
2)Will ~アスリートがやりたいこと
・過去を振り返って満足度やモチベーションが高かったのは何か、やりがいを感じた瞬間を探り、将来のビジョンを考える。
3)Must ~アスリートが果たすべき役割や責任
・組織や周囲から求められる役割は何か、どのようにその役割に貢献できるかを考える。
5. 感じたこと
・アスリートは日々厳しい競争環境の中、競技力を高めるためのトレーニングを行っているが、その過程で培われたスキルは社会で活かせるものであることを再認識。
・一方、アスリートはキャリアに不安があっても身近に相談できる人がおらず、孤独に戦っている。ACCはアスリート目線になって、手を差し延べる必要がある。
・またキャリアについて考える機会も乏しい。日本特有の長い練習時間・拘束時間と、指導者→選手の一方通行の指導スタイルも変えていく必要がある。
・アスリートと指導者の双方向の健全なコミュニケーションのためには「心理的安全性」の確保が重要。指導者の意識改革は重要。
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