企業がスポーツのスポンサーシップを活用するメリット・デメリットは?仕組みや成功事例も解説


こんな人におすすめ
■ スポーツチームからスポンサーになって欲しいと依頼を受けた

■ スポーツ・スポンサーになってみたらと勧められた

■ スポーツ・スポンサーシップについて詳しく知りたい

スポーツのスポンサーって、余裕があって全国的に展開している大企業がやるもの、自分たちには関係のない世界と思っていたのではないでしょうか。

結論、企業の規模や事業内容に関わらず、どんな企業でもスポーツ・スポンサーになれます。
また、活用の仕方次第でブランド認知度向上や社会貢献などの目的を達成できますよ。

 

ただし、企業の戦略や目的に合ったスポーツや契約内容でなければ、効果が得られず、損することになります。

本文のメリットや事例を読んで、投資効果を最大限にするための活用方法を考えましょう。

==目次==

1. そもそもスポーツ・スポンサーシップの仕組みとは

①スポーツ・スポンサーシップの仕組み

そもそもスポーツ・スポンサーシップとは、BrandとPropertyの間で、Associationを通じてWin-Winの関係を生み出すことです。

  • Brand   : 企業、ブランド、商品、サービスなど
  • Property : スポーツチーム、組織、クラブ、大会、イベント、アスリート、施設など
  • Association: 合意、取引、アクティベーション、お金、価値、視認性など

スポーツと企業がWin-Winの関係を築ける理由

  • スポーツ(Property)には、パッション(情熱)とエモーション(感情)を作り出す力がある
  • 人は健康や感動、人との繋がりを求めてスポーツをやり、メディアやSNSを通じてスポーツに注目する
  • 企業(Brand)はスポーツ(Property)をの力を活用して、ブランドの認知度を高めたり、社会貢献などさまざまな目的を達成することができる
  • そして、スポーツ(Property)は企業(Brand)からスポンサー料を受け取り、チーム運営、大会運営、育成強化、スポーツ施設への投資を行う

つまり、あなたの会社はスポンサー料を支払い、スポーツチームが持っている「資産」を利用して、ブランド認知度を高めるなどの「目的」を達成します。

したがって、企業の広告を出す対価として広告料を支払う、といった単純な契約ではありません

「資産」と「目的」について、それぞれ解説していきますね。

②スポーツ・スポンサーシップにおける「資産」

スポーツ・スポンサーシップにおける「資産」とは、スポンサーが商用に利用できる権利のことをいいます。

これらの「資産」を活用できる地域に制限を設ける場合もあれば(日本国内だけ、アジアだけなど)、設けない場合もあります。
地域の制限を設ける場合は、当然、スポンサー料は安くなります。

「資産」の種類と、それぞれの具体例について解説していきます。

チームロゴや選手の肖像権(イメージライツ)

  • クラブやチームのロゴやエンブレム、スローガンなどを商品や宣伝に使用する権利
  • 選手を商品の宣伝に使用する権利(チームとの契約においては複数人を使用するのが通常)
  • 「公式スポンサー」として名乗る権利 

ブランド名を表示する場所

  • メディアでの露出
    • スタジアム内の固定ボード広告
    • スタジアム内のデジタルLED広告(地域別に異なる広告を表示可能)
    • 選手ユニフォームへのブランドロゴ掲載(試合用・練習用)
    • 記者会見の際のバックボード広告
    • ネーミングライツ(スタジアムや大会名にブランド名付与)
  • 会場内での影響
    • スタジアムの外壁・VIPエリア・バーカウンターへのブランドロゴ表示
    • スタジアム内の固定ボード広告(テレビには映らないエリア)
    • スタジアム内のデジタルスクリーンへの表示

デジタル資産

  • SNSでのブランド露出
    スポーツ(Property)公式アカウントでのブランドロゴ掲載
  • ニュースレターへのブランドロゴ掲載
    スポーツ(Property)のファンデータベースを活用して、セグメントごとに異なるロゴを表示
  • SNS上での懸賞、抽選会などのキャンペーンやイベントスポンサー
  • 公式サイト・アプリでのブランドロゴ掲載(スポーツチームのSEOは高い)

アクティベーション権

  • スポンサー契約発表のイベント実施(プレスリリース、記者会見)
  • 選手とのコラボレーション(ブランド向けプロモーション撮影)
  • 試合当日のスタジアム内外でのイベントやブース出店
  • 商品にチームロゴを表示して、「公式〇〇」と名乗って販売
  • CSR活動への協賛(地域社会向けのチャリティー活動など)

ホスピタリティ&チケット

  • VIP席チケット・VIPルームの提供(→スポンサーが顧客を招いて接待)
  • 一般チケットの提供(→スポンサーが顧客向けにチケットを配布)
  • スタジアムツアーやミュージアム入場チケットの提供

体験型イベント

  • 選手との交流イベント
  • チームの遠征に同行
  • スタジアムでのプレー体験(→スポンサーが顧客や従業員向けに特別イベント開催)
  • サイン入りユニフォームや限定グッズの提供

③スポーツ・スポンサーシップを通じて達成できる「目的」

企業がスポーツ・スポンサーを通じて達成できる目的は、大きく3つの項目に分けられます。
「ブランド」「ビジネス」「社会貢献」です。
各企業の経営課題、経営戦略、マーケティング戦略によって目的は異なります。
1つだけではなく複数の目的を達成することも可能です。

ブランドに関する「目的」

  • ブランドへの忠誠心向上
  • ブランドの認知度向上
  • ブランドイメージの変更や強化
  • ブランド価値の伝達
  • メディアでの再露出(ブランド名が伝説の瞬間に映り込めば、その後何十年も映像が流れる)

ビジネスに関する「目的」

  • 売上増加
  • 顧客を楽しませる
  • ディーラーの関心を高めて、やる気を引き出す
  • グッズや限定商品の販売
  • 競合他社との差異化

社会貢献に関する「目的」

  • ブランドの魅力通じて才能ある人材を活用
  • SCR(企業の社会的責任)

2. スポーツ・スポンサーシップのデメリット

①コストがかかる

企業がスポーツ・スポンサーになるためにはスポンサー料(コスト)を払う必要があります。
スポーツ(Property)が持っている「資産」を活用して、目的を達成するためです。

ただし、スポンサー料を払ったからといって、必ずしも目的が達成できる訳ではありません。

楽天がFCバルセロナのメインスポンサーだったことをご存知の方は多いかもしれませんが、これは失敗事例と考えられています。

楽天の事例

  • 楽天はFCバルセロナのメインスポンサーとして巨額のスポンサー料を支払い
  • 「楽天」のブランド名は世界中で多くの人に知られることにんり「ブランド認知度」は向上
  • 有効なアクティベーションを行わなかったため、本来の目的である「ストリーミングサービスの販売増加」の目標は達成できず
     ※楽天とFCバルセロナの事例の詳細にジャンプする

スポンサー料を払えばスポーツ・スポンサーになれますが、それだけでは目的は達成できません。
目的達成のためには、スポーツ(Property)の「資産」を活用して「アクティベーション」を行うことが重要です。
逆に言うと、有効な「アクティベーション」を行うことが目的達成のカギといえます。

②効果を測定しにくい

スポンサー料の対価として求める効果(=目的の達成度合い)を測定することは容易ではありません。

スポーツ・スポンサーの目的にはブランド認知度の向上やイメージ向上、社会貢献といった無形の価値を求めることが多く、正確に測定することは難しいからです。
商品の売上増加など数値で測れる目的でも、”スポンサーシップによる効果”と、それ以外の企業努力を切り分けることはできません。

ただし、目的の達成度合いの「推測」はできます。

目的効果”推測”方法
ブランド認知度向上・メディアバリューによって、テレビやSNSへの露出を金額化(メディアバリューを算定する企業がある)
ブランドイメージ向上・顧客アンケートにより確認
・スポンサーになる前と後のSNSフォロワー数比較により効果の有無を推測
売上増加・スポンサーになる前と後の売上高比較により効果の有無を推測
従業員のモチベーションアップ・従業員アンケートにより確認
・スポンサーになる前と後の離職率比較により効果の有無を推測

スポーツ・スポンサーは企業(Brand)の目的達成には有効ですが、売上やマーケティング効果を具体的に数値化して効果を測定することは簡単ではありません。
スポーツ・スポンサーになる場合、数値で正確に効果測定することはできない前提で、代わりにどういった指標で費用対効果を評価するか考えておく必要があります。

③ミスマッチがあれば効果が得られない

企業の経営戦略やマーケティング戦略と、スポーツ(Property)がもつイメージや、目指す方向性などにミスマッチがあれば効果が得られず、目的が達成できません。

両者(企業とスポーツ)の特性やイメージがチグハグだと、スポンサー活動を通じたメッセージが不明確になるからです。
また、消費者に勘違いさせることになれば、逆に売上減少やイメージダウンにつながる可能性もあります。

ミスマッチの例

  • 海外でのブランド認知度を高めたいのに、そのチームが海外で試合をする機会はほとんどない
  • 女性向け商品の売上を伸ばしたいのに、そのスポーツの女性競技人口が少ない
  • 自動車メーカーが環境にやさしいイメージを持ってもらためトレイルランのスポンサーになったが、選手から苦情が出た
     ※DACIAとUTMBの事例にジャンプする

スポーツ・スポンサーになるときは、自社のイメージとスポーツ(Property)がもつイメージが合致していることが重要です。
ただし、あえてイメージを変えるために、スポーツ(Property)を選ぶこともありますので、やはり目的が大事ですね。
目的を明確にして、目的達成のために効果が最大になるようなスポーツ(Property)を選びましょう。

④スポーツの不祥事に巻き込まれる可能性がある

スポンサー先のスポーツ(Property)が不祥事を起こした場合、スポンサー企業(Brand)もイメージダウンや売上減少といった形で巻き込まれる可能性があります。

消費者の目線では、不祥事を起こしたスポーツ=スポンサー企業と世間から見られてしまうためです。
スポーツ選手の不祥事は週刊誌やニュースで取り上げられやすいネタですよね。

スポーツの不祥事の事例

  • スポンサーになっているチームの選手が交通違反による事故を起こした
  • ニュースで取り上げられ、競技シーンが放送された際に企業ロゴが映りこんだ
  • スポンサー企業にも、消費者から苦情の連絡が入り、イメージダウンにつながった

本来スポーツ・スポンサーは、企業のイメージアップにつながりますが、不祥事が起これば逆にイメージダウンになります。
パートナーが増えればこういったリスクは付きものですが、スポーツ・スポンサーシップも例外ではない点は認識しておく必要があります。

3. スポーツ・スポンサーシップのメリット

①ブランド認知度の向上

企業はスポーツ・スポンサーシップを通じて、認知度を上げられます。

スポーツ(Property)が持っている「資産」を活用することで、自社ではリーチできなかった層や地域にもアピールできるからです。

スポーツ・スポンサーといえば、「広告」表示を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
ブランド認知度の向上は、最も分かりやすい目的といえますね。

スポーツを活用したブランド認知度向上の事例

  • 試合用ユニホームの胸やスタジアムの看板にロゴを表示してテレビに映る
  • 練習用シャツの胸にロゴを表示して、練習風景をSNSにアップされたり、自宅にロゴが持ち運ばれるようにする
  • スポーツ大会のスポンサーになり、参加賞のTシャツやバッグにロゴを入れる

スポーツ(Property)の「資産」にブランド名やロゴを表示することで、メディアを通じて幅広く拡散されて、ブランド認知度を向上できます。

②企業・ブランド・商品のイメージアップ、イメージチェンジ

企業はスポーツ(Property)を利用して、イメージチェンジ、イメージアップができます。

消費者はそれぞれのスポーツ(Property)に対するイメージを持っており、そのイメージを有効活用できるからです。

イメージアップ、イメージチェンジの事例

スポーツ(Property)が持っているイメージと、あなたの企業をうまく結びつけることでイメージアップにつなげられます。
また戦略的にイメージチェンジをすることも可能です。

③ターゲット層への直接アプローチ

スポーツ・スポンサーシップを通じて、企業がターゲットにしている顧客層に直接的にアプローチできます。

スポーツ(Property)が持っている「資産」を通じてメッセージを届けることが可能だからです。
SNSの発達により、よりターゲットを絞る、またはセグメントごとに違うアプローチができるようになりました。

特定のターゲット層に直接アプローチした事例

マーケティング戦略上、具体的なターゲット層があれば、スポーツ(Property)の「資産」を有効活用できます。

④ビジネスチャンスの拡大

スポーツ・スポンサーシップを通じて、企業のビジネスチャンスを拡大することができます。

スポーツ(Property)にはさまざまなステークホルダーやパートナーがいます。
スポンサーになればパートナーとして、そのネットワークに入ることができ、人脈の拡大やビジネスの拡大につなげられるからです。
また、企業の知名度やイメージが向上することにより、売上増加につながる可能性があります。

ビジネスチャンスを拡大した例

  • 企業の知名度が上がり、アポイントすら取れなかった企業とも接点が持てるようになった
  • チームが主催するスポンサー企業交流イベントを通じて、顧客になりうる企業との親密化が図れた
  • 企業のイメージアップや認知度向上により、売上が増加する
  • VIP席に取引先を招待して接待した

スポンサー企業は、スポーツ(Property)にとってのパートナーの位置づけであり、他のパートナーとの親密化を図ることができます。
B to Bの企業であっても、ビジネス拡大につながる可能性があります。

⑤従業員・パートナーのモチベーション向上

スポーツ・スポンサーになれば、自社の従業員やパートナ―のモチベーションを高めることに繋がります。

スポーツは人に感動や共感といったポジティブな感情を与えてくれますが、サポートしている企業にも同様の感情を抱くからです。
そういった企業で働くことを従業員は誇りに思ったり、貢献しようという気持ちが自然と芽生えるからです。

オーストラリアの調査では、スポーツ・スポンサーシップは従業員と企業にとってプラスの効果があるとの報告があります。

  • 自分の会社のスポンサーシップに良いイメージを持つ従業員は、そんな会社に所属していることを誇りに思う傾向にある
  • そのようにして誇りを感じた従業員は、組織市民行動を起こす傾向にある
       組織市民行動とは、義務・報酬とは関係なく、企業の生産性向上に貢献しようとする従業員の行動のこと
  • いわゆる「従業員エンゲージメント」が高い状況になり、企業の生産性が上がり、離職率は低くなる傾向がある

ただし、逆に言うと、自分の会社のスポンサーシップに良いイメーを持たない場合(=意義や目的が正しく伝わっていない)、会社の生産性を下げ、離職率を下げることにもなりかねません。
従業員とのコミュニケーションや従業員も巻き込んだスポンサー活動(アクティベーション)が重要です。

4. スポーツ・スポンサーシップの事例

スポーツ・スポンサーシップの事例を紹介します。
それぞれの目的も記載しているので参考にしてください。

①スポーツクラブのメインスポンサーになり、ブランド認知度を向上(FCバルセロナと楽天)

楽天は FCバルセロナのメインスポンサーとして、4年間で200百万ユーロ(300億円)以上を投資しました。
ユニホームの胸へのロゴ表示、スタジアムへのロゴ表示などにより、「楽天」ブランドの認知度は大きく向上しました。

しかしながら、これは成功とはいえない事例と考えられています。

楽天は巨額のスポンサーフィーを払っただけで、FCバルセロナの会員へのアプローチアクティベーション)を行いませんでした。
その結果、本来の目的である「ストリーミングサービスの販売」はあまり増えなかったからです。
「楽天」の名前が知られただけで、楽天が何をやってる会社かはほとんど知られていません。

この事例のように、ロゴを表示するだけ(いわゆる広告)では、目的を達成しきることはできません
選手を起用したイベントやキャンペーン(いわゆるアクティベーション)を行っていれば、商品(ストリーミングサービス)についての認知度を高め、顧客獲得もできたはずです。

②スポーツクラブのメインスポンサーになり、競合他社と差別化(FCバルセロナとSpotify)

Spotifyは音楽やポッドキャストなどのストリーミングサービスを提供している会社です。
FCバルセロナのスポンサーになる前からSpotifyの知名度は高く、世界中で利用されていました。
したがって、このスポンサーシップによるプラスアルファの会員獲得はそれほど見込めず、ビジネス的には意味が見い出しにくい事例です。 
それにも関わらず、Spontifyは巨額のスポンサー料を支払ってメインスポンサーになりました。 

その理由は、マーケットでのポジションをキープすることと考えられています。
Amazon Music、Apple Musicなどの競合企業が急成長している中で、ライバルとの差異化が狙いとなっています。 

あとはアフリカなど、これまで開拓しきれていなかったマーケットでの知名度向上も目的と考えられます。

Spotifyのオーナーがバルサファンであるのも大きな要因です(これが一番?)。 

③オリンピックの公式スポンサーになり、ブランドイメージを変更(オリンピックとマクドナルド)

マクドナルドは1976~2017年まで40年以上オリンピックのスポンサーでした。

マクドナルドはジャンクフードを販売しており、スポーツの健康のイメージやアスリートの食事としては相応しくありません。
が、なぜこのパートナーシップが生まれ、長期間に渡って継続されたか。 

ブランドイメージを変えることが狙いでした。
大会期間中、選手村でのアクティベーションを通じて、多くの選手がマクドナルドのロゴと一緒に写真を撮りました。

マクドナルドの認知度は上がり、「不健康」というイメージを払拭したわけです。

とはいえ、引き続きジャンクフードを取り扱っているため、決してベストプラクティスとはいえませんが、スポンサービジネスの実態でもあります。

④リーグのスポンサーになり、商品購入決定者にアピール(スペインの女子スポーツとイベルドローラ)

イベルドローラはスペインの最大手電力会社ですが、約10年前に女子サッカーリーグのスポンサーになりました。
背景は、家庭内で電力会社を決めるのは女性という市場調査に基づき、決定権限者にアピールする目的がありました。
また、女性を応援することによるCSR(社会的責任;Corporate Social Responsibility)やイメージアップの観点もあります。

その後、イベルドローラは多くの競技の女子リーグスポンサーになっています。
もちろんホッケー女子1部リーグも!

非常に分かりやすく、明確な目的がある好事例ではないかと思います。

⑤スポーツクラブとのアクティベーションを通じてCSRと地元へのコミットメントを達成(ジローナ FCとGosbi) 

ジローナFCはスペインサッカー一部リーグに所属するチーム。
Gosbi はジローナFCと同じ地元(ジローナ県フィゲーレス;ダリの故郷)のペットフード会社です。
地元企業であることから、2021~2024年の3年間ジローナFCのメインスポンサーとなりました。 

ジローナFCはクラブ公式犬を任命し、動物もクラブ会員として受け入れる(1500匹)アクティベーションを行いました。
また動物愛護のCSR活動を実施。
その結果、ジローナFCは世界で最もペットフレンドリーなクラブになり、Gosbiはイメージアップ、地元へのコミットメントの認知を得ました。 

ジローナFCとGosbiのスポンサー契約は2024年に終了しましたが、今でも動物たちはジローナFCの会員ステータスを維持しています。 

地元企業がスポンサーにつくのは最もよくある事例ですね。
マイナー競技やイベントになればなるほど、地元企業の割合が大きくなっています。

⑥オリンピックスポンサーになり、キャンペーンを通じてブランドロイヤリティを向上(オリンピックとP&G)

P&Gは2010年バンクーバー大会からオリンピックのスポンサーになりました。

大会期間前後で、「Thank you Mom」キャンペーンを展開し、P&Gの商品を主に使う「お母さん」をターゲットにブランドのイメージアップを行いました。 
これによって、米国での売上は100百万ドル以上(150億円)増加したといわれています。

バンクーバー大会での成功によって、続く2012年のロンドン大会、2014年ソチ大会、2016年リオデジャネイロ大会のスポンサーにもにもなりました。

お母さんへの感謝やリスペクトが詰まったCMです。
何度見ても、ウルっときます。

⑦選手を起用して、ブランドイメージを変更(レアルマドリードとニベア)

ニベアは2013年からレアルマドリードのスポンサーになり、写真のような広告やCMを展開しています。
当初はスペイン国内限定のスポンサーとしてパートナー関係が始まり、2017年からは地域の制限がないグローバルパートナーになっています。

この事例では、レアルの選手をアクティベーションに起用することによって、「男性も使う」「男性用もある」というイメージチェンジが狙いでした。
ニベアが取り扱う美容や消臭剤などのパーソナルケア商品は、もともと「女性が使うもの」という印象の払拭に成功しました。

非常に分かりやすい、キレイにハマった事例だと思います。

⑧スポーツ大会のスポンサーになり、企業イメージを改善(UTMBとDACIA)

DACIA(ダチア)はルーマニアの自動車メーカーで、UTMBはヨーロッパアルプスのトレイルランの最高峰の大会です。

このスポンサーの背景は、DACIAがハイブリッドカーやEVの販売を開始し、UTMBの山でのイベントを通じて環境配慮へのイメージチェンジを狙うものでした。

一方、DACIAは引き続きガソリンやディーゼルなどの化石燃料車の販売も行っているため、一部のトップ選手から不満がでました。 
自動車は環境汚染や気候変動を助長している要因の一つであるにも関わらず、イメージチェンジに利用されるのはちょっと違うのでは、という指摘です。
「目先の利益の前に、将来を考えるのが選手や協会の責任である」「もし他に選択肢があれば、別のスポンサーを選んで欲しい」という主張がSNS上で展開されました。

引き続き DACIAはUTMBのスポンサーに留まっていますが、企業の実態とイメージの大きなズレが生じてしまった事例です。

5. よくある質問

スポーツ・スポンサーになるには最低いくら必要?

最低でも100万円は必要です。
ただし、スポンサー先の認知度、人気、どういった「資産」の権利を得るかによって、スポンサー料は大きく異なります。
自社の商品を提供するのみで、スポンサー料を払わないケースもあるので、必ずしも「お金」を払う必要はありません。
スポーツ(Property)とのWin-Winの関係を築けるよう、自社の目的、求める効果、予算に応じて、スポーツ(Property)と相談してください。

スポンサー契約の期間はどれぐらい?

スポーツ(Property)は3~5年の複数年での契約を望んでいます。
収入源を長期で確保し、安定した運営をするためです。
ただし、スポンサー先との交渉事のため、まずは様子を見るために一年契約からスタートすることも可能です。
一つのイベントだけや一試合だけ、といった形のスポンサー契約もあります。

スポンサー契約を途中で解約することは出来る?

可能です。
ただし、通常は違約金が発生します。
契約内容によっては、不祥事や契約違反があった場合には違約金なしで解約できることもあります。
契約書の内容は弁護士も交えて慎重に検討してください。

スポンサーになった後どのようなアクティベーションすればよい?

アクティベーションは目的達成のためには重要な活動です。
選手を起用した宣伝やCM、商品にチームのロゴを付けて「〇〇チーム公式▲▲」と表示する、試合当日に販売ブースを設けるなど、さまざまなアクティベーションが展開されています。
海外ではサッカークラブのスポンサーを中心に、ユニークなアクティベーションが行われているので参考になります。
今後このブログでも、今後アクティベーションの事例を紹介していきたいと考えています。

スポンサーとしての効果測定はどうすればよい?

目的に応じて、目標SNSのフォロワー数、売上高、顧客数で効果を「推測」できます。
ただし、スポンサーでるあることの”効果のみ”を抜き出すことは難しいといえます。
企業や従業員の方の努力や宣伝の効果との切り分けはできないからです。
したがって、従業員の方への労いも忘れないでくださいね。

スポンサーとして、どのような「資産」を活用して、どのようなアクティベーションを行ったかの定性的な評価も重要です。

6. まとめ

スポーツ・スポンサーシップを通じて達成する目的を明確にしましょう

スポーツ・スポンサーと聞くと、自分たちには関係のない世界と考える方も多いのではないでしょうか。
たしかに、これまで日本ではプロ野球やJリーグのようなプロスポーツに協賛する、もしくはスタジアムに看板広告を出すといったものが多かったと思います。

しかし、スポーツ・スポンサーシップは、単なる広告とその対価としての広告料ではありません

スポーツには人を魅了し、人の結束を強め、人の心を動かす力があります。
この力を企業の価値創造につなげるのがスポーツ・スポンサーシップです。

したがって、スポンサー料は将来収益や価値を生むための「投資」といえますね。

スポーツのどの「資産」を活用するのか、どんな目的を達成するのかを明確にして、企業の業績アップのツールとして有効活用しましょう。


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